
村田真
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2011
112×194cm
キャンバスに合成樹脂塗料
村田真は『ぴあ』編集者を経て美術ジャーナリストとして長らく活躍し、「美術家になるには」(2002/なるにはBOOKS)、「アートのみかた」(2010/BankART)、「いかに戦争は描かれたか」(2017/BankART 1929)など多数の著書を出版、朝日新聞や北海道新聞に美術評を書くかたわらBankARTスクール校長を務め、長年に渡り日本の美術界に大きく貢献してきました。
美術に関する書き手としてはよく知られている村田ですが、作家としての制作も同時に再開したのは15年前になります。フェルメールの「画中画」を描くことから始め、高橋由一の「豆腐」を考察し、キャンバス自体を豆腐や焼き豆腐、油揚げに見立て描いた「豆腐絵画」や、キャンバスを画集そのものに仕立てオリジナルに酷似した装丁を描いてみせた『画集』・『絵画芸術』シリーズなどの作品を発表。絵画史を引用したユーモラスな作品群は、美術ジャーナリストとして長年作品を客観的に批評してきた村田ならではのユニークな視点によって制作されています。
「ファン・エイクからジャクソン・ポロックまで、50余人の名高い画家のサインを書き重ねたもの。サインは画集などから採取。黒はフランス、赤はイタリア、青はオランダ+ベルギー、黄色はドイツ語圏と色分けした。ポロックで終わっているのは、それ以降の画家がほとんどサインを書かなくなったから。タイトルの「タギング」とは、グラフィティ用語でライターのコードネームを記すこと(タグは「商標」)。それによって名を広く知らしめると同時に、ナワバリを主張するマーキングの意味もある。さて、展覧会に行くと、絵そのものより作者名ばかり見ている人がいる。その人にとって絵とは画家の代名詞にすぎないのかもしれない。」(村田真)