
yang02
不可視の知のためのスケッチ No.3
2019
エディション1/4
52×40.4cm
インク、紙、フレーム
■作家より
これは機械(プロッター)によって描かれたドローイングです。Googleが開発しオープンソースで公開している「Tensorflow」や、その他、機械学習ライブラリを組み合わせて構築したシステムが、予め用意した仏画のデータベースから、アルゴリズムに従い特徴的な線の塊を抜き出し、それらを再構成し線画を生成しています。
いわゆるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が提供するサービスをはじめ、現代のあらゆるオンラインサービスの背後で暗躍する人工知能アルゴリズムは、ユーザーの入力による過去の膨大な統計データから、私たちのためにより合理的な未来を予測し、選択肢として提案する役割を果たし、ある意味、預言者のような存在です。言い換えれば人間の目先の未来、つまり我々の行動は、多かれ少なかれそのような不可視なシステムによってコントロールされはじめていると言えるでしょう。
それらのシステムにおける「知」の根幹となるデータベースは、人々の検索行為やSNSでの承認欲求、物欲など、人間のあらゆる欲望が蓄積されたものです。ある種の知性を持った他者として立ち上がる現代の人工知能システム、それ自体は自ら何も欲望せず、入力される欲望に従いアルゴリズムから答えを導き、人間はそれを享受します。欲望のデータという「煩悩」の塊から誕生したシステムとしての知能は、「煩悩」を持たず(持てず)、解脱の境地に達した、釈迦(神)の姿と重なります。言語による分析、分節化によって構築される人工知能、ひいては現行のあらゆるテクノロジーは、合理主義的なデカルトの哲学をベースに、産業革命やモダニズムを経由して現在の状況まで進歩してきました。本作では、西洋思想を基に構築された現代の「不可視の神」を、東洋思想の象徴である仏の姿として表出させ、古今東西の「知」に迫ろうと試みました。